<前置きという、読者へのお手紙>

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 別に、怪しげな魔道を使えるようになることが目標ではないが、それでも、その手法の中にある人間の潜在能力を目覚めさせる部分が、大きく効果を上げているのは間違いない。  そのまま、学園でやっていることを知って真似した教育機関も少なくないが、その効果が学園ほど顕著で無いことも事実であった。言葉にならないノウハウが、学園にあることが間違いないが、もちろん、それを究明できた人間は存在せず。だから、白蛇苑学園で学ぶことは、ただそれだけでも、名古屋近辺ではステータスになっていた。  しかし、マンモス学園なのも事実なので、分母の人数も多いのでその中の傑出した人物が目立つだけで、実際はそれ以上に当たり障りもない人畜無害な人間が多いだけだろうというのが、偽らざる世評だった。  つまり、”おお、あんた、白蛇苑の出きゃあ”でもあれば”ああそう、白蛇の出なんだ~”でもあるといったところ。実際、白蛇苑の入試は、おそらく周囲の学校の中で一番、甘いはずだ。  ただ、入った後の選別はかなりはっきりしている。能力によって差別化を確実に行う。そして、優秀な人間にも、そうで無い人間にも、個別に学習方針を立て、それぞれにふさわしい学習手法を提供するのだった。  そこらは、国の教育省の方針を完全に無視していた。しかし、結果的にそれなりの実績を上げているのだから、エドメガロポリスの”中央”としても、ぶつぶつと文句を言っても、強制指導に入ることができないままであった。  その学園の教育方針によって、自分の中の隠された才能が開花できるという成功体験があるから、多少の問題があったにしても”元気に”学園生活を送ることができるのだった。  すでに、創建百年を過ぎて、親子どころか、親子孫三代で、学園出身者というのも、珍しくなかった。彼らが、必ずしも明陰道の信徒になることが義務化はされていないが、この学園で学ぶことで、確かに準信徒になっていることまでは否定できなかった。  ただ、もともと宗旨というほど強いものを持たず、むしろ、”世界中の宗教を重んじる”方針という名目の元に、”良いところ採り”をしているのだった。今では、日本中に大小の学園のチェーンができているが、あくまでもその中心は、名古屋市中村区のこの学園だった。というわけで、前置きが本当に長くなった。まず、物語を始めようか。 ようこそ、白蛇苑へ。
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