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黄嶋が気に入っているがために、今では100本を超える木蓮が植えてあった。
木蓮は互いに申し合わせたわけでもないのに一斉に花開き、天に向かって大きく己を誇ったあと、潔く落ちていく。
散るのではなく、落ちるのだ。
黄嶋は、その様を先生と一緒に見るのが好きだった。
先生もそれを知っていたし、館の住人たちも分かっているので、木蓮が咲くと二人で連れ立って出るのを皆が見送った。
長くまっすぐなアプローチを、二人は静かに歩いて行く。
「失敗するわけがない。もちろん、僕の親族たちは大騒ぎだったけどね。こっちも弁護団をぞろっと揃えて、でっち上げたDNA鑑定書も持って、宣言したわけだ。」
一番厄介なのが親族だということを、黄嶋はよく知っていた。
結婚もしておらず子供もいない黄嶋の後継者に、是非自分を、自分の子をと望む親族たちのなんと多いことか。
どれほど血が薄まっていようと、何代もの過去にほんの一滴でも血が混じって血縁となっている遠縁の者まで招き、黄嶋は自分の後継は一人息子の貴彦であると告げたのだ。
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