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「宿題、早く来ませんかね~。わくわくします~。」
珍しく積極的にやる気になっているオトさんの様子に、他の住人が目を丸くする。
「は、張り切っていますね、オトさん。」
意外だという風に、モトさんが声をかけると、オトさんが照れたようにえへへと笑う。
「それはね~。きっと僕への宿題は、音楽のことだと思うからです~。それしか能がないんですけど、それだったら僕だけが役に立てるでしょお~?嬉しいな~、僕にも出来ることがあるなんて~。」
自分に自信がないオトさんの、唯一誇れるものが音楽だ。
それを生かしていける、そして自分だけが応えられるのが、宿題なのだ。
オトさんが張り切っても無理はない。
むしろ、そんなオトさんの様子に、住人たちも触発される。
そんな様子に、先生は緩んでしまう口元を手で隠して堪えた。
変化のない単調な館での生活には、いい刺激だ。
彼らの活性化も図れると、きっと黄嶋も思うだろう。
はつらつとし始めた住人たち。
幾つになっても生きがいは常に大事だと、先生は貴彦のもたらす効果に満足げな息を漏らした。
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