運動会とシンさん

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5月のゴールデンウィークが明けると、春慧学園初等科は運動会に向けて練習が始まる。 1年生には初めての運動会だ。 それどころか、貴彦にとって、運動会なるもの自体未体験の行事である。 他の子たちは、幼稚園や保育園で体験してきている子がほとんどだった。 貴彦以外では、海外からの帰国子女が数名と、貴彦のように家庭の事情で就学前にどこにも通うことのなかった数名が、同じように初めてのことに戸惑っていた。 「皆さんは紅組です。」 担任の緑川先生に言われ、グラウンドに並んだ子供たちは帽子を赤に変えた。 初等科は1年生から6年生まで縦割りで4つのチームに分かれる。 1組が紅組、2組が白組、3組が黄組、4組が青組。 運動会はどんなことをするんだろうと、貴彦はドキドキしながら先生の言葉を聞き漏らすまいと緊張しながら耳を傾けた。 「1つ目は50メートル走といって、8人で走ります。」 走る練習はもうしている。 体力テストというものがあり、タイムを計っていたからだ。 貴彦は、真ん中よりは速い、けれどトップグループではない、そんなタイムだった。
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