音楽発表会とオトさん

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夏休みが終わり、貴彦の学校生活が再開された。 内履きに夏休みの宿題、それから一日目から授業があるので教科書にノート。 どの子もかなりの荷物量だった。 ただ、ほとんどの子が送迎してもらえるため、自分で運ぶ距離はさほど長くはない。 にもかかわらず、玄関まで、はては教室まで荷物を運ぼうとする親も多く、臨時で人数を増やした警備員から制止されていた。 事前におたよりやメールの一斉送信で知らせていても、この過保護ぶりである。 警備員にくってかかる親や学校に苦情の電話を入れる親は毎年いる。 それについては、影の理事長である黄嶋が対応を浸透させていた。 怪我や病気など正当な理由もないのに自分の荷物一つ持てないような児童は他の児童との活動についていけないでしょうから、転学をご検討ください、と。 乱暴じゃなあとそれを初めて聞いたときに先生は呆れたが、親の的外れな過保護合戦は子どもにとってよい方向に働かなかったので、反対はしなかった。 富裕層なら何でも許される、そんな校風はお断りだというのが、この学校を創った黄嶋の方針なのだ。
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