音楽発表会とオトさん

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ただ、本格的に習っているわけではない。 それに、どうにも自分には音楽の才能がないように貴彦は思っていた。 もちろん、オトさんの演奏は大好きだし、オトさんが弾くピアノに合わせて歌ったり踊ったり楽器を演奏したりするのは好きだ。 ただ、面白いほど上達するということもなく、貴彦も音楽だけに興味をもつこともなかった。 「音楽発表会の曲は、先生が決めます。」 高学年になると、各学級から意見を出し合って決めるということらしいが、低学年、初めて音楽発表会に臨む1年生は先生たちが考える曲になるのは仕方がなかった。 「みんなで練習してから、歌がいいか合奏がいいか希望を聞きます。」 それを聞いて貴彦は、なんとなく歌かなあと思った。 合奏に入れと言われたら、それはそれでいいか程度の気持ちだった。 「亜子は絶対に合奏!ピアノ習ってるの、楽譜だって読めるんだから。」 「私も合奏がいいな。どんな楽器があるんだろ。」 どうやら亜子と美穂は、まだ曲も決まらないうちから合奏を希望する気満々らしかった。
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