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休み時間に、貴彦は大夢に音楽発表会について聞いてみた。
「僕、得意な楽器一つもないから・・・歌がいいな。だってさ、楽器は失敗すると目立つもん。歌だったら、小さい声でもいいから・・・」
引っ込み思案な大夢らしい希望だった。
好きだからという理由ではなく、失敗することを前提で決めようとしている。
「あー、俺、どっちでもいいや。てっきとーにしちゃえ。」
音楽と竜大の相性は、あまりよくないらしい。
ついでに言うと、興味もないらしい。
貴彦は、どんな曲をするのかなあとわくわくしていた。
週末、マグノリア・マナーに帰ったのは、貴彦だけではなかった。
父親の黄嶋由岐彦も一緒だった。
音楽発表会のことを自宅で貴彦から聞いた黄嶋が、それだったら先生とオトさんに尋ねるといいよと教えてくれて、二人で来たのだった。
二人を出迎えた住人たちは、貴彦を連れてさっさと中に入ってしまい、オーナーとしての僕の扱いはどうなんだろうねえとぼやく黄嶋の肩を先生が笑いながら叩いて慰めた。
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