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「音楽発表会のう。まだやっとったのか。」
ダイニングルームで貴彦から尋ねられ、先生は懐かしそうに目を細めた。
先生は昔、貴彦が通っている春慧学園の教師をしていた。
どうやらその頃から、音楽発表会はあったらしい。
「あの行事はなあ・・・まあ、一言で言えば。」
面倒くさいーー
先生にしては、珍しい感想だった。
貴彦だけでなく、他の住人たちも、思わず身を乗り出して先生の言葉の説明を待つ。
「だろうねえ。」
黄嶋だけが、なんとなくその理由を理解して苦笑していた。
「意義のある行事だとは思うとる。運動会同様、文化祭同様、そこでなら活躍できるという子もおるし、音楽は情操教育にもよい。」
ですよね!とオトさんが興奮気味に同意する。
なのに、先生がそれを「面倒くさい」と言った。
「どうにも外野がの。」
「そうそう。親たちがねえ。あっはっは。」
やっぱりかーと言いながら、黄嶋が笑った。
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