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「一人の我が儘を認めたらとんでもないことになるから、絶対に保護者のいいなりにならんよう会議で念を押されるのだが、そうか、音楽発表会か。」
先生は、頭を掻いた。
そんな先生の様子を見て、音楽発表会ってそんなに楽しい行事じゃないのかなと貴彦は心配になった。
「音楽、いいですよ~、楽しいですよ~。」
先生の話を聞いて、他の住人たちも黙り込みがちになっている中、オトさんが一生懸命アピールした。
「音楽はですね~、音だけでまわりを幸せにするだけのパワーがあるんです~。僕も、たくさん幸せな気分にしてもらってます~。」
「いや、オトさんは作曲家なんだし、オトさんが作った曲で気分よくなれる人がいるんだから、むしろ幸せにしてあげている側だよね?」
「そ、そうでしょうかあ。コメさん、ありがとうございます~。」
えへへと照れるオトさんは、自分がどれだけの才能があるか気に止めたこともなければ、音楽に関係していられればそれだけで幸せという無欲な人間なのだ。
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