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この館の自室でオトさんが作った曲は、黄嶋はしかるべき研究機関を通して実際に演奏を再現して検証し、それから名を伏せて世に出すようにしている。
オトさんの本名で曲が発表されていたのは、この館に来る前までのことだ。
「それで貴彦。歌はもう決まったんだったね?」
「あ、うん。」
この館に来る前。
金曜日の音楽の時間に、先生から楽譜を渡され、CDで曲を聴いた。
「『僕と君と青空と』っていう曲なんだ。教科書にはなくってね、先生が楽譜くれたの。途中で手拍子が入るんだよ。なんか、面白そうな歌だった。」
「そ、そそそ、そうですか!面白そう!?わあ!!ありがとうございます~!!」
「え?え??」
曲名を言ったら、突然オトさんに感謝され、貴彦はびっくりした。
オトさんの興奮ぶりに、他の住人たちも目を丸くする。
ピンときたのは、先生が一番だった。
「おまえ・・・やりおったな!ユキ!」
「いやいやいや、あっはっは。こういう歌もあるよーって学校に紹介はしたけどね。あっはっは。」
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