4899人が本棚に入れています
本棚に追加
/1025ページ
「今、手を繋いだお友達と、ご挨拶しましょう。」
先生に言われて、貴彦は「黄嶋貴彦。たっくんでいいよ。」と先に名乗った。
それを聞いて、大夢は「布川大夢・・・大夢でいいよ。」と小声で返してきた。
「大夢くん、何か好きなものある?」
友達というものを作ろうと、貴彦が一生懸命話しかける。
なかなか目を合わせようとしないながらも、大夢は手を繋いだままなので逃げ場がない。
ようやく小声で「花・・・水やって育てるの・・・」と言った。
「僕も!それ好き!」
僕というより、ハナさんが!ハナさんと一緒に畑で野菜育てると、実ができる前に黄色や白の花が咲いてね、と言いたかったが、あのパパたちのことは内緒なので、それ以上は言えない。
貴彦の返事を聞いて安心したのか、ようやく大夢が貴彦の方を見てにっこり笑った。
後から、大夢の趣味を聞いて幼稚園のころ馬鹿にされたことがあるから言うのが怖かったと告白され、貴彦が憤慨するのはまた別の日のこと。
「それではしゅっぱーつ!」
先生の号令とともに、貴彦たち1年生は教室を出た。
貴彦の新1年生としての生活は、始まったばかり―――
最初のコメントを投稿しよう!