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「この映像は、大事にとっておかんとな。おまえの父とヤクさんが帰ってきたときに見てもらわんと。」
「うん!」
先生の言葉に、元気よく返事をする貴彦。
六送会のあと、黄嶋邸に戻ってから貴彦は父の黄嶋に電話していた。
貴彦の説明を、黄嶋はうんうんと相づちを打ちながら聞いてくれた。
そのときに、3月になったら帰れそうだよと言われ、貴彦は思わず「本当?お父さん本当!?」と聞き返してしまった。
もう1ヶ月も戻らない父に、貴彦はそろそろ会いたくなって寂しく思っていたのだ。
指揮が終わったことより、父が帰ってくる、そのことの方が貴彦を喜ばせた。
お父さんが3月に帰ってくるんだよと報告すると、他の住人たちは「やっとですか。」「待ちくたびれたよねえ、たっくん。」「さっさと戻ってこいってんだ。」などと口にしたが、やはりどこかほっとしたような顔になった。
待ち遠しいのうと先生に頭を撫でられて、貴彦はうん!と返事をした。
そして3月ーー。
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