春の気配と貴彦

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貴彦も、入学式の日のことを思い出した。 6年生に手を引かれて式場に入ったこと、名前を呼ばれて返事をしたこと、お願いしてスガさんに来てもらったこと、それとは別にお父さんがちゃんと見ていてくれたことーー それからもう1年経つのかと、貴彦は改めて驚いた。 小学校はもちろんのこと、幼稚園や保育園などの経験がなかった貴彦には、毎日が新鮮で目まぐるしく、運動会や音楽発表会は練習すら楽しかった。 2年生になったら、もっと新しいことがあるのだろうかと、貴彦はわくわくしてきた。 「皆さん、たくさん思い出があるみたいね。でも、先生のお話はこれからです。お口を閉じましょう。」 ざわついている教室内がさらにうるさくなる前に、緑川先生は全員を静かにさせた。 「入学式のあと、何があったかも覚えているかな?」 そう尋ねられ、貴彦は写真のことかなと思った。 学級ごとに撮った記念写真には、保護者代理として菅野とともに写っている。
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