春の気配と貴彦

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「学校で何かあったのでしょうか。」 菅野も、貴彦が出ていったあとのダイニングルームのドアを見つめる。 食事中の会話の弾まなさは、今までになかったことだ。 集まっていた住人たちが困惑して顔を見合わせる。 「もしや・・・貴彦くんは学校でいじめに遭っているのでは?」 眉間にしわを寄せてモトさんがそんなことを言うものだから、「い、いじめ・・・たっくんがそんな目に~」と、オトさんが涙目になってふらふらと椅子に座り込む。 「たっくんのことですから、そんなこたぁねえでしょうが、もしいじめに遭ってんなら、相手方をしめちまってもいいですかね。」 荒事専門のシンさんが、物騒な発言をする。 「いじめと決まったわけじゃねえだろ?あれじゃねえの?動いて発散したらもやもやしたもんが吹っ飛ぶてやつじゃねえか?だったら明日にでも外で思いっきり遊んでやるんだけどなあ。」 ハナさんはそれほど悲観的ではないが、その意見が的を射ているわけではない。
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