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「おまえさん方の気もわからんわけではないが、大事にしすぎとらんか。」
心配のあまりおろおろする住人たちに、先生は苦笑した。
座ったまま、食後の煎茶をゆったりと啜る。
「学校に通うようになれば、トラブルの一つや二つがあって当然、今までが何もなさすぎたのだ。むしろ、おまえさん方がそんなに狼狽えてどうする。そんな様では、貴彦も相談できんだろうよ。」
先生に諭されても、住人たちの心配がなくなるわけではない。
そんな彼らに、やたらと貴彦の部屋に行ってはいかんぞと先生が釘を刺す。
「順番に押し掛けてあれこれ聞き出そうなんぞしてはいかんからの。信じて待つのも親の仕事。いずれ貴彦の方から言ってくるわさ。ここに来たいと泣いて我儘を通したのだから、自分でもどうにかしたいと思うとるのだろう。落ち着くまで待ちなさいよ。」
そこまで言われて、誰も抜け駆けして貴彦の部屋に行けなくなってしまった。
何となく気まずいまま、住人たちはそれぞれの部屋に戻っていった。
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