4909人が本棚に入れています
本棚に追加
「手間をかけるの。」
先生に声を掛けられて、シンさんは大したこたぁありませんやと照れて答える。
「俺がここまでやらなくても、ここの防犯システムってぇのは完璧なんでしょうが、まあ、アナログ人間なんで。自分の目で見て手で確認しねえと安心できねえんです。」
「それでいいのさ。むしろ、それを気を緩めず何年も続けてくれているおまえさんの仕事は、称賛に値するというものだ。」
先生に誉められて、シンさんはさらに照れまくって言葉が出なくなったので、ここでも早めに休むようにと言って先生はコンサバトリールームを後にした。
オトさんは、とっくに自室にこもっている。
作曲という作業に没頭すると不規則な生活になるオトさんは、日頃からどちらかというと夜型だ。
おそらく、今夜も遅くまで、もしくは徹夜だろう。
そのストッパー兼監視役は、モトさんである。
オトさんが無理をしないよう監視する名目なのだが、だいたいはモトさんの方がオトさんの奏でるピアノを聴きながら眠る羽目になるのだが、いないよりはいい。
放っておくと、オトさんは自室で倒れかねない。
ちょうど書斎から何冊か分厚い本を手にしたモトさんが、オトさんの部屋に入るところだった。
最初のコメントを投稿しよう!