春の気配と貴彦

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地下に降りると、ランドリールームで菅野が作業をしていた。 住人たちの洗濯物は、部屋から直接地下のランドリールームに送られるシステムになっている。 ダストシュートと同じ要領だ。 大型の洗濯機と乾燥機がそれぞれ3台ずつあり、その仕事は菅野が担当していた。 ヤクさんがいるときは、自分のパソコン仕事の合間の息抜きになどと言って、菅野を手伝っていた。 今は先生が時々手伝うが、そのたびに菅野は一人で大丈夫ですと遠慮の言葉を口にする。 そして、皆が寝静まる頃にこうやって一人で黙々と洗濯物を畳んでいくのだ。 「おまえさんも早めに休みなさいよ。」 「はい。あとはリネン類で終わりですから。」 個人の洗濯物は、かごに入れて部屋の前まで届けられる。 中に入れるのは各自だ。 もはや執事の仕事ではなかろうと先生は思うのだが、自然と分担されてしまった仕事を変えようとするのは難しかった。
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