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先生が黄嶋を連れ出したことで、住人たちもこみ上げてくる罵詈雑言をどうにか抑えることができた。
何より、貴彦に聞かせていい内容ではない。
何があったのだろうと、貴彦はきょろきょろする。
「えっと、えっと、お父さん、どうかしたの?」
ドアが閉まる瞬間、黄嶋の「痛い!」という声は聞こえた。
父が怪我でもしたのか、具合でも悪いのかと、貴彦は心配する。
「あー、なんでもねえよ。これから先生と話があるんだとよ。そこらへんに足先でもぶつけたんじゃねえの。」
「そうですよ。何でもありません。」
ヤクさんがフォローし、菅野も自分が押さえたことで乱れた髪を撫でて整えた。
うんうんと頷く住人たちに、そうなのかなあと思いつつ、再び食べ始める貴彦。
その頭上で、住人たちの視線がぶつかり合う。
そこには、決意があった。
黄嶋から無茶ぶりはされたが、貴彦を守るためならば、と。
貴彦の黄嶋財閥後継者公表まで、時間はあまりに短かったーー
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