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ハナさん、コメさんの次は、ヤクさんの番だった。
「ちょうどいいんじゃねえの?俺はレポート仕上がってるし。明日締切だもんなあ。」
貴彦の頭を雑にわしゃわしゃ撫でながら言うヤクさんに、レポート苦手組からの視線が厳しくささるも、ヤクさんはけろりとしている。
それどころか。
「オーナーには今日中に提出しとく。言っとくが、こ面倒くせえ資料山ほど添付しといたからな。明日中に見終わるかどうか保証できねえなあ。もしかしたら他の奴らのレポート見るのが明後日以降になるんじゃねえかなあ。」
その言葉に、シンさんとハナさんの表情がぱあっと明るくなる。
ヤクさんなりの時間稼ぎのようだ。
黄嶋は苦笑して、「僕もそれなりに速読なんだけれどね?それに、僕に理解出来ないような資料じゃあ意味がないから再提出もある得るよ?」と返す。
同じくらいの腹黒度ですねと菅野とモトさんが呟いた。
ヤクさんと一緒に眠れると喜んだ貴彦は、本をたくさん持ち込んだ。
絵は綺麗だが外国の言葉で書かれている絵本や、同じく美しい図が多く載っている図鑑など、持てるだけ持ってヤクさんの部屋を訪問する。
「おまえなあ・・・明日の朝怒られるときは一緒だぞ。」
翌日、夜更かしして本を何冊も読んだ二人はかなり遅く起きてきて、貴彦の生活時間を乱したとヤクさんは他の住人たちに厳しく注意された。
「ごめんさない!僕が本読んでってたくさんお願いしたの!」
「それにしても限度があります。その限度を弁えるのが大人の役目です。」
モトさんの言い分に、ずりいぞ!タカのことも怒れ!とヤクさんが主張し、その脇腹に菅野が肘打ちを入れた。
結局怒られたのはヤクさんだけだった。
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