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鬼とヒトの子
「鬼はー外、福はー内」
「鬼はー外ー、福はー内」
「イッテッ。くっそ、何なんだよっ」
久しぶりの現世に、ウキウキしながらこっちへ来てみれば、来て数分しか経っていないのにこのザマだ。
何で今日、皆が現世に行きたがらなかったのか、何で俺は今日まで現世カレンダーを見ていなかったのか。
絶え間なくパラパラと何処からともなく降ってくる豆に八つ当たりをしながらボヤく。
「鬼はー外!」
「だああああ!」
バラバラバラバラバラバラ。
まただ。また大量の豆が降ってきやがった。
もう、いい。
こんな日に現世行きを選んだことも、カレンダーをチェックしなかったことも、もう今更なことだ。
現世と地獄を繋ぐ道が見つからぬよう、滅多に人が来ない公園を選んでおいたことだけは、自分を褒めてやりたい。
ドスン、と何やら軽い倦怠感を覚えた身体を、公園にあったベンチに腰をおろし、ぐでぇ、と両手足を伸ばしていれば、ばさばさばさ、と空から灰色の軍団が降りてくる。
くるっくー、くるっくー、と自己主張の激しいこの軍団たちは、どうやら俺に降ってくる豆を目当てにやってきたらしい。
「ああ、もう。食え食え。今日はお前たちを喰う気にもならねぇよ」
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