鬼とヒトの子

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名案だ!と言わんばかりにキラキラとした表情を浮かべなら言ったヒトの子に、被っていた帽子を取り、自身に生えている額の2本の角を見せれば、「あ」とヒトの子は、声を出して固まる。 「え。本物?」 「いや、お前が見せろって言ったんだろうよ」 「え、だってっ」 支離滅裂な奴だな、とヒトの子に呆れながらため息をつけば、目の前でまたアタフタと焦り始める。 「う、わぁ、本物。触ってもいいですか?」 「…何で」 「え、ダメ?」 こてんと首を傾げながら聞くヒトの子に、どうしてだか断れなくて、「少しだけだぞ」と前髪をあげながら言えば、「はいっ!」と満面の笑みでヒトの子は頷く。 ぴと、と角に触れた手は、生きているヒトの子にしてみれば、冷たい。 ぺたぺたと触る手も、手首も、八重歯で噛めば、ぷつり、と直ぐに歯が通りそうに柔く見える。 「本当に本物なんですね」 けれど、目の前で、楽しそうに、嬉しそうに笑うこやつの姿に『喰う』という鬼本来の本能は全く疼かず、「…別に、もうちょっと触っても、怒らないが」などと、普段の俺からは想像つかない言葉すら、出てくる。 「え、いいんですか!じゃあ」 ぱああと明るい笑顔を浮かべたヒトの子の手が、俺の手に伸びる。 「わ、お兄さん、暖かいですね!」 ぎゅむ、と握られる手は、さっきも思ったが、やはり、冷たい。 「お前は、随分と冷たいな」 「そりゃそうですよ。真冬ですから。ああ、暖かいですねぇ」     
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