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触ってもいい、と自分で言ってみたものの、ぎゅむぎゅむと手を離すことの無い手に、どうしたものか、と空いている片方の手でたまりに溜まった豆をぼりぼりと食べながら考えていれば、「鬼はー」という例のあの声が聞こえてきて、思わず、バッ、とヒトの子に覆いかぶさる。
その瞬間、バラバラバラバラ、と空からまた、豆の雨が降り、公園にまた、豆が増えた。
「すまない。大丈夫か」
「え、あ……」
ベンチと俺で挟むようにしたヒトの子を見やれば、ヒトの子の頬が紅い。
「おい……お前、頬が紅いが」
ペタリと頬に触れれば、ぶわっ、とさらに赤みが増していく。
「……ど、ど、ど、ど、ど」
「ど?ドド?」
肩を震わせ、言葉を詰まらせたヒトの子に、何だ?と首を傾げて言葉を待てば、「どうしましょう!!」とヒトの子が両手で顔を覆いながら叫ぶ。
「おい、どうした」
何があったのか、とヒトの子の腕を掴み声をかければ、「わ、わ、わたし…!」と蚊の泣くような小さな声が聞こえる。
「鬼さんに、恋、したかも、しれません……!!!」
あわわわ、と不思議な声を出しながら、顔を隠すヒトの子に、興味がわき、グイ、と顔を覆う手を引けば、「あっ」と焦った声が聞こえる。
頬と耳まで、赤く染め上げるヒトの子に、ドクン、と、また身体の中で何かが、大きな音を立てる。
「俺に惚れるとは、珍妙なやつだな」
クツクツ、と笑えば、ヒトの子が、金魚の口のように、ぱくぱく、と声に出さずに口を動かす。
「俺が欲しいなら、落としてみろよ。ヒトの子よ」
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