0人が本棚に入れています
本棚に追加
横で口笛を吹いた隊員をリーダーの男が睨み黙らせる。彼女の挑発的な目には全く迷いが感じられず、武器不携帯の証明だと本当にやりかねないとアレックスは思った。代わりに彼は別のことを要求する。
「あなたたちは人間じゃない、バイオロイドだ。少なくともアメリカではロボットもバイオロイドも学者にはなれないし、北米考古学協会なんてボクは知らない、聞いたこともない。仮に本当だったとしても学者が戦場で何をするんだ? 言葉だけじゃだめだ、それらを証明するものを見せて」
「分かったわ。……だったら現状を見てもらうのが一番早いかしら。ちょっと待ってて」
彼女は懐から黒い筒を取り出した。武器の可能性が高いと判断してアレックスは警戒したが、アニェスが中央の紐を外すと黒い筒は薄い板に早変わりした。
(なんだ、ただのコンピュータか。それにしても現状をみれば解るってどういうことだろ)
彼女が黒い板を開くと中からディスプレイと鍵盤が現れた。キーを叩いている間もアレックスは巨大な銃の狙いを彼女に定め続ける。
「これが今私達のいるところよ。ほら、あなたの背中が写っているでしょう? ここから衛星画像で世界中の好きな場所を見られるわ」
ディスプレイに映っているのはメキシコ北部の平原に立つ二十二人の狼人間と銀色の恐竜。アレックスが尾を揺らしてみると、画面の中の恐竜も同じように尾を揺らす。
最初のコメントを投稿しよう!