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テーブルの向い側に座っている彼女の発掘業の師、シャルル・ペリオがコンピュータを操作して情報ソースを検索する。彼の右頬には鷹の図案の毛染めが入れられており、アニェスの知る人物の中では最も発掘業が似合っている。オンライン資料館に収められている、過去一五〇〇年分の新聞データベースから彼が拾い上げた記事はある動物園の宣伝だった。
「二五一九年四月四日ABNNの記事にサンディアゴ絶滅動物園オープンの話題がある。見所の一つが『カノープス社が制作した三体の恐竜型ロボット』だそうだ。口元がコーヒーで濡れてるぞ」
アニェスはハンカチで口を拭ってから、ブラジル豆のカフェオレを一口啜りつつシャルルが提示した記事を確認する。
コンピュータの画面に表示された文面には写真にはティラノサウルス・ブラキオサウルス・トリケラトプスの三体が子供たちの前でパフォーマンスをしている様子が収められている。アニェスは湯気立ち上るカフェオレを一気に飲み干して言った。
「なるほど、確かにここには恐竜型ロボットが写っているわね。でも私がスポンサーだったらこれだけでは出さないわ。もちろん他にも情報はそろえてきたんでしょう?」
発掘業はスポンサーなくして成り立たず、調査は正確かつ迅速に行わなければならない。写真一枚程度の情報では資金など出してもらえないことを彼女はよく知っていた。
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