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「それと、ボクは単にお散歩に行きたかっただけなんだ。イシドールさんに伝えておいたはずだけど、聞いてなかったの?」
アレックスがそう言うとシャルルは再び例の怒り顔になり、イシドールをじろりと睨みつけた。回れ右をして逃げようとしたイシドールに鋭い眼光が突き刺さる。
「……おい、どうしてそれを早く言わなかったんだ?」
「いや、だって言うタイミングが無かったんすよ、元はと言えばアニェスが帰ってくるなり騒ぎ出したのが原因じゃないっすか。オレはただ『気分転換に散歩に行ってくる』ってそのまま伝えたのに勘違いしたのは彼女の方なんすよ」
「何よそれ、私が全部悪いって言いたいの? 隊長に叱られた後で気分転換ってのはあなたが拗ねて逃げた時の言い訳じゃない。違うならその辺のニュアンスまできっちり伝えるべき――」
その言葉はシャルルの鉄拳により中断されてしまった。すぐさまイシドールからもガツンと景気のよい音が聞こえ、二人は見事なまでにノックアウトされたのであった。
それは、午後四時三十一分ちょうどのことだった。
ワオォォォォォン…………ワオォォォォォン…………
不意に狼の遠吠えが拠点の南から聞こえてきた。調査員は一斉に作業の手を止め声のした方へと駆けていく。目標物発見の合図だ。アレックスも彼らと共に発見現場へ向かった。
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