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彼女が掲げるパネルの蓋を見ると見覚えのある字でこう書かれていた。
このパネルを再び開く者へ
どうか、彼のことを壊さないでやってほしい。チップに収められている設計図を見て武器と爆弾を取り外せば、少々大きいが兵器としての機能を持たない愛玩ロボットに戻るだろう。その後でチップ内にある映像を彼に見せてくれないだろうか。願わくは、私の亡骸とともに
アレックスはなぜ自分が任務を果たせなかったのか、その理由をようやく理解した。
「アイザックさん、ボクを守るためにわざと電源を切ってくれたんだね……」
彼は悲しみを表現する方法を知らない。《死》に対してどう振る舞えばいいのか、いくら考えても答えは出なかった。それでも彼はシャルルとの約束を守り、弱音を吐くことはしなかった。
「……映像の方には何が記録されていたの?」
「まだ誰も見ていないっす。最初に見る権利があるのはオレたちじゃないんすから」
アニェスからチップを受け取ったイシドールは接続パネルにあるスロットへチップを差し込んだ。するとアレックスの記憶の中に映像データが転送されて、四百年前の弾丸が飛び交う戦場へ彼をいざなった。
『お前がこれを見ている時には私はもう死んでいるだろう。だが、お前を守るために手は尽くしたつもりだ』
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