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「戦場に行く前の日、僕はアイザックさんにこう言ったんだ。『ボクのボディはどんな弾丸も跳ね返すハイチタニウム製だから、敵に襲われた時はボクが盾になって守ってあげる』って。その時頭の上のアイザックさんがどんな顔をしたのかは分からない。ボクを優しく撫でてくれたけど、今考えるときっと悲しい気持ちだったんだよね」
「自分の子が戦地に送られるのを喜ぶ親なんざどこにもいないからな」
ふう、とシャルルはため息をついて懐から携帯端末を取り出す。画面に映っているのはモスクワで彼の帰りを待つ妻と娘の写真。少し間を置いてからアレックスは続けた。
「軍に加わってからサイボーグ兵やアンドロイド兵、AI戦車をたくさん見た。みんな人格は与えられてなくて、兵士制御車の意のままに操られる人形だった。『全ての人工物は人間のためにある。人間の意に従わない道具など不要だ』。軍の上官が他のみんなに聞こえるようボクに対して言ったんだ。上官には誰も逆らえなくてボクもアイザックさんも言い返せなかった。……ねえ隊長さん、ボクは今動物園の人気者でもアメリカ軍の特攻兵器でもない。もしみんなの役に立てることがなかったら、ボクは解体されちゃうの?」
シャルルはしばらく何も答えない。長い沈黙の後に、彼は徐に口を開いた。
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