CH1 - Living in the shell

1/8
前へ
/37ページ
次へ

CH1 - Living in the shell

――二五二五年八月六日――  弾丸が飛び交う音、砲弾が戦車を破壊する音、小型ジャミング爆弾が爆発する音。昨日まで地平線の向こうでしていたそれらの音が、今朝は一段と近い場所から聞こえてくる。赤い荒野を照りつける太陽は罪人を焼く業火の如く彼の身体をじりじりと熱していく。  アレックスは軍事メカニクスの大手カノープス社に造られた恐竜ロボットだ。彼は兵器として改造され、両手にガトリングガン・腹部に電磁パルス爆弾を取り付けられている。アメリカ軍は彼のボディがハイチタニウムで出来ていることに着目し、特攻兵器として徴用することにしたのだった。  エル・パソ奪還作戦は失敗、この拠点を放棄して撤退する――それが上官の判断だった。後方では動く丘と形容される機動要塞が兵士たちの収容を始めている。彼の任務は電磁パルス爆弾を抱えて特攻し、全員撤退までの時間稼ぎをすることだ。もうすぐ最後の調整を終えて出撃しなければならない。彼は絶滅動物園の時からずっと自分の世話を見てくれた技師に別れの言葉を告げる。 「アイザックさん、今までありがとう。この六年間本当に楽しかったよ」     
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加