CH1 - Living in the shell

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(――システム起動、時刻調整開始……ネットワーク接続不能。エラー。リトライ……ネットワーク接続不能。エラー、手順をスキップ。自己診断開始……)  アレックスの身体に再び電源が送られて、全身の駆動を統括するBIOSが電子頭脳の前に起動される。彼にとって完全に機能を停止している時間は無であり、内蔵時計の時間差でしか認識することができない。しかし、何故か今回はオンライン調整が実行できなかった。時刻調整を行わないまま電子頭脳が起動され、彼の意識は二五二五年八月六日午前八時一五分四三秒の時点で目覚めることとなった。  弾丸が飛び交う音、砲弾が戦車を破壊する音、小型ジャミング爆弾が爆発する音。たった二十秒前まで確かに聞こえていたそれらの音が一切無くなったことに、気がついたばかりのアレックスは困惑した。聴覚センサーが捉えるのはごうごうという風の唸りのみ。いつの間にか横に寝かされている上視界は何か黒いものに遮られている。顔以外はずいぶん熱を帯びて、各部の冷却装置がオーバーヒートを起こさないようフル稼働していた。 (……あれ? おかしいな。ボクはこれから敵軍へ突撃しようとしてたのに、どうして今起きたばっかりなんだろう。スリープ状態に設定した覚えもないし、自己診断で電源系統の異常もなかった。だとすると一体なんで……)     
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