CH1 - Living in the shell

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 彼が自分の置かれた状況について思索していると、顔を覆っていたものが取り外されて眩しい太陽光が視覚センサーを直撃した。明度調節を一瞬で終わらせると見えてきたものは、高く上った太陽が照り付ける青い空と、障害物も起伏もない文字通りの平原。直前の記憶と照合してみると場所は変わっていない。ただ、軍が設置していた設備等が忽然と消えてしまっている。 もう一つ記憶と食い違う点は、どこかへ行ってしまった人間たちの代わりに見慣れぬ生命体がアレックスを取り囲んでいることだ。生命反応は全部で二十二、二足直立をしていて骨格は人間と同様のようだが、様々な特徴――頭部の形状・全身の毛・長い尾――はオオカミのそれに酷似している。武器に類するものは所持していないものの、全員防砂マントと片眼鏡というずいぶん前時代的な装いである。このような生命体がいるという記録はアレックスのデータには見当たらないが、一つ確実に言えるのは彼らがアメリカ軍所属でないということ。 (これは敵の工兵? 狼ベースのバイオロイドのようだけど……とにかく、このままだと解体されちゃうかもしれない)  全身の駆動系が正常であることを確認すると、巨大恐竜らしからぬ俊敏な動きで勢いよく立ちあがり、両手のガトリングガンを目標へ突き付けた。尾で地面を叩き威嚇するのも忘れない。 「お前たちは誰なんだ! 下手に動いたらこの銃で蜂の巣にしてやるぞ!」 最大限のボリュームで声を発しながら尾で大地をもう一撃。威嚇の効果は十分あったようで、全員すぐさま両手を頭の後ろに組んで地面に跪いた。投降の意思表示だ。     
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