一人の家

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 「今すぐに魔女を止めるべきよ。そうでないと、今に村の人達に捕まえられて、あなたも火あぶりにされる。」  「どうして。私はただ魔女なだけで、なにも悪いことはしていないじゃない。それに、つい先日まであなたも魔女だったわ。」  そう言うと、興奮で赤かった顔サブエラの顔がさっと青くなった。そして、イルザが魔除けにドアノブに掛けておいたニシンの頭を掴んで、床に投げ捨てた。  「___どうして、どうしてこんなまねをするの、イルザ!私たちは人間よ。女や農民や魔女である前に人間なのよ。変な真似をせずにいれば、普通に暮らせるの。なのにどうして今ある命を大切にしようと思えないの!」  サブエラは涙をこぼしながら叫んだ。しかし、イルザの表情が少しも変わらないのを見ると、信じられないというような顔をして、二度、三度と首を振り、家から出て行った。  今、隣の家の奥さんが、窓越しにこちらを睨みながら通り過ぎていった。薬の臭いを外に漏らさないために全ての窓とドアは閉め切ってあるが、それでも隙間から臭いが漏れているのだろうか。  そんな邪険な目で見ないで欲しい、と、イルザは思う。臭いさえひどいが、いろいろなハーブや動物の体が入ったこの薬は、できあがりさえすれば、どんなけがにも効く万能の傷薬になるのだ。     
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