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「あの子にはまだ性別が無いのですよ」
グラスは驚きのあまりお茶をこぼしてしまいました。
ここは秘密の雨園。
グラス、フォグナ姫、ブリザラ姫は月に一度のレイニー姫主催のお茶会に招かれています。
「まぁ。性別が無いとはどういうことですの?」
レイニー姫の鈴を振ったような声。
「そういえばわたしも聞いたことがある。半身に合わせて性が変わる人がいるらしいな」
ブリザラ姫がこれまた不思議な噂を伝えます。
「半身?」
「生涯の伴侶や主従のことだそうだ。
例えばサン王子は男だ。グラスが従者になりたければ男に、妃になりたければ女に、どちらにでもなれるってことさ」
「ヘイズは姫と呼ばれていたけど……」
「ええ。お母様がヘイズを姫として育てたがっているの。でもヘイズは男の子みたいでしょう? 周りがどうこうできるものではないのだけれど……」
思案顔のフォグナ姫を見てグラスも考えこんでしまいます。
もし自分の体もそうだとしたら?
「いつ体が変化するのですか?」
「例えば体を鍛えれば次第に男らしく、女性になるにはお相手の男性に愛されればいいの」
フォグナ姫はそう言って意味深に笑っています。
愛される?
グラスは最近の王子の様子を思い浮かべて、確かに自分は愛されていると思います。
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