雨の国のレイニー姫

1/6
56人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ

雨の国のレイニー姫

太陽の国、雨の国、霧の国、そして氷の国。 この世界を四分する国で、百年に一度の婚姻の儀が執り行われることになりました。 王子はただ一人、太陽の国のサン。 そこへ三人の花嫁候補。 まずは雨の国のレイニー。泣き虫で気弱な姫です。 次に霧の国のフォグナ姫。滅多に姿を見せない謎の多い姫です。 最後は氷の国のブリザラ姫。身も心も凍らせると噂の冷徹姫です。 さてサン王子はどなたを選ばれるのでしょうか。 「こんなプロフィールだけで生涯の伴侶を選べだって? 冗談じゃない! 今から会いに行くぞ」 サン王子は手にした紙の束を弾き、勢いよく立ち上がりました。 サン王子は細身ですが、かなりの長身です。黄金の髪があちらこちら元気に跳ねた頭が、まるで小さな太陽のごとく輝いています。 傍らに使えるのは王子と歳の近い従者グラス。幼い頃よりサン王子に振り回されっぱなしで、やや老けて見える苦労性の青年は、はぁ、と何度目かの溜息。 「王子、それ程簡単なことではございません。勝手に他国へ入れば外交問題になります」 「王子としてではなく、一般人旅行客として行けば良い」 「一般人がそう簡単に一国の姫に目通りできるわけないでしょう?」     
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!