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きれいな顔してるだろ
弁護士に支えられて智美が法廷に入った。
「トモちゃん、大丈夫だから。あなたは私が守ってあげる。だから、落ち着いて喋るのよ」
隣で弁護士がそっと呟いた。心身が衰弱した智美にとっては立っているだけで重労働だった。俯いている顔には疲労が積もっているようだ。
3日前から続く尋問では、智美は途中で泣き出したり、その場で倒れたりすることがあった。そのため審議は早めに打ち切られたこともあった。弁護人のみならず、同情的な陪審員も多くいた。それは裁判官も同様だった。
「被告人、武田智美。あなたは父親で武田道場主、武田智亮を殺害したことを……認めますか」
智美が顔を上げた。打ちひしがれた弱々しい表情は消えており、不敵にもニタリと笑っていた。
「殺ったのは、俺だ。あぁ、智美で間違いねぇよ馬鹿」
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