呼吸を止めて、数秒

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呼吸を止めて、数秒

胡散臭い笑みを浮かべたスーツ姿の男性が、雲に乗ってやってきた。乗り物はいろいろとあるらしい、向こうの方では馬に乗っている袴姿の侍がいるし、虎に乗った野性味溢れる男もいた。ローラースケートで来る女性もいた。 「どうもどうもこんにちは。あら、まだお若いようですが、えぇ年齢制限などはございませんが、久しぶりにお若い方をこちらでお見かけいたしましたので。普段は割とヨボヨボのおじいちゃんだとか、見るからに体弱そうな方が多いので。こんなに健康的な細マッチョを見たのは久しぶりでございます。え、私、貴方の水先案内を務めます、まぁ、名前なんてどうだって良いですが。獄卒さんと言われるよりかは天使さんと呼んでいただけると嬉しゅうございます。あ、あちらにいらっしゃる、虎に乗っている、ほら、あの顔面がいかつい奴なんかが現世に広まってしまったので。ここはどこか、ですか。ここは、天国でも地獄でもないですし、天国ですし地獄でもあります。簡単に言ってしまえば、こちら、あの世、でございます」 実感は無かったが、どうやら俺は死んだらしい。
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