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 私は、いわゆる中流家庭に生まれた娘です。父は、とある大企業に長年務めるサラリーマンで、生活には全く困らないだけのお給料を貰っています。何十年と務めた甲斐もあり、今や、それなりの地位にまで出世しました。お陰で私は、17になるこの歳まで、金銭的に一度も苦労らしい苦労をすることなく、生きてきました。  私たち家族が住む家は、昔、父がローンで買った家です。その敷地には、なかなかの広さの庭があり、一本の木が生えています。所狭しと華やかな花が植えられた中に立つ、ただ一本の無骨な木。しかし父がこの敷地を手に入れた時、このような木は数本生えていました。そんな景観を嫌った父は、次々とそれらを切り倒し、根を引っこ抜き、その跡に綺麗な花を植え付けていきました。そうして最後に残ったのが、このただ一本の木です。
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