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父
私が目を覚ますと、木の下に、父が立っていました。いつの間にか、私は木の枝に乗ったまま寝ていたのです。
「まったくお前は・・・本当に、変わった娘だ・・・」
そう呆れる父の声が聞こえます。
「お父さん・・・いったいどうしたの?」
「『どうした』は、こっちのセリフだ。そんな木の上で、いったい何をしていた?」
「大したことじゃないわ・・・ただ、気持ちのいい風を受けたり、綺麗な空や風景をぼんやり見つめてたりしてただけ。そしたら、いつの間にか寝ちゃって・・・」
「はぁ・・・」
父は溜息を吐いて言いました。
「そんなおかしなことをやるくらいなら、勉強しなさい。もうすぐ、大学受験生になるんだぞ?」
「お父さん、私、大学受験はしないって、前から言っているでしょ?それに、風を受けたり綺麗な景色を見るのも、別に『おかしなこと』じゃ・・・」
「ああ、もう、変なことを言うんじゃない!」
父は少し声を荒げました。
「また、『作家になりたい』なんて話か。そんな、絵空事を言っていられるのは、今のうちだぞ・・・父さん、お前の面倒をずっと見ていられるほど、金の余裕は無いからな」
ー結局は、お金の問題なのね・・・ー
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