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それを聞いた時の私は、悲しくて、悔しくて、涙さえ出そうでした。色々と理屈をこねてみたって、最後は結局、お金の話になるのか。そう思うと、父に対して、憤りさえ感じました。「偽善者!」と叫びたくなりました。
そんな私を放ったまま、父は家へ戻ろうとしています。
「待って、お父さん」
木の上の枝に座ったままそう呼び止めた私を、振り返った父は怪訝そうに見つめました。
「お父さんは、姉さんのことをどう思う?」
「どう思うだって?」
「つまり・・・姉さんのことを、『立派な大人』だと思う?」
私は、夢でウサギさんが言っていた言葉を、そのまま使いました。
「ふむ、そうだな・・・まあ、まだ就職までしていないから、何とも言えんが、少なくとも、ここまでは『立派な大人』になるための階段を、順調に進んでいるだろうな」
「どうして?」
「え?」
父は聞き返しました。
「どうして、姉さんは順調に『立派な大人』への階段を進んでいると思うの?」
「そりゃあ、お前・・・」
父は、「決まってるじゃないか」という顔をして、言いました。
「あいつはここまで、学校で優秀な成績を残し、難関と言われる大学に進み、そこで留年もすることなく、ここまで順調に来ているじゃないか。近々留学したいとも言っているし、この調子なら、就職にも困ることはないだろう・・・な?『立派な大人』へと過程そのものじゃないか」
「そう・・・か。うん、分かった」
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