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私には、もはや反論をする気持ちさえ起こりませんでした。
「お前も、姉さんを見習うんだぞ。大学の授業料とかは、心配しなくていいからな」
そんな私の様子から、娘が納得したとでも思ったのか、父は表情を和らげてそう言いました。
ーもはや、何も言っても無駄だー
そう思った私は、父の言葉に対してただ
「うん・・・」
と返事をしただけでした。
「・・・あ、それとな」
父は、思い出したように付け加えました。
「お前が登っているその木だけどな、明日、切り倒すから」
「・・・なんで?」
「なんで、ってお前・・・こうして一本だけ生えていると、周りの花と調和が取れないじゃないか。それに、この辺りに生える木はこの一本だけだし、近所から目立つからな」
そう言って父は、再び家の中へと戻っていきました。この時は、そんな父の背中を、私は呼び止めませんでした。
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