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やがて、黒ウサギは木の下まで辿り着きました。そして、手に持ったカバンから携帯を取り出し、誰かに電話をかけました。
「もしもし、ミラー工業のテニエル部長様でいらっしゃいますか?あ、どうもー、すみません、ワンダー商事のウサギですけども。はーい、すみません、お世話になっております。すみません、今お時間少々、よろしいでしょうか?・・・ああ、よろしいですか、すみませーん・・・」
私は、黒ウサギがお客さんと何について会話しているのか、全く興味ありませんでした。その証拠に、今ではその具体的な内容を、一ミリも思い出すことが出来ません。しかし、一つだけ思い出せるのは、彼がやたらと
「すみません、すみません」
と連呼していたことです。
ー何をそんなに謝っているのだろう?話していること自体は、全然謝らなきゃいけないようなことじゃないのに・・・ー
そう思ったことを覚えています。
ウサギさんは、笑ってみせたり、頭を下げたり、そして合間合間に「すみません」を挟んだりつつ、ひとしきり電話で話をしていました。そして最後に、
「はい、すみませーん。それでは引き続き、よろしくお願い致しますー。はーい、それでは失礼いたしますー。はーい、すみませーん・・・」
と言って、電話を切りました。そうして、大きく長い溜息を一つ、
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