ウサギ

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 「はぁぁぁぁ・・・」  と吐き、おもむろにこちらを見上げました。  「君はそんなところで何をしている?」  ウサギさんがそう聞いてきたので、  「なにって・・・ただ、綺麗な空や遠くに見える町並みを、ぼんやり見つめていただけ」  「ふん・・・結構なご身分だね。まあ、今のうちに、そうやってのんびりしといた方がいいか。然るべき時が来たら、こうやってスーツを着て、僕みたいに忙しく働かなきゃいけないんだから」  そう言ってウサギさんは、身に纏った黒いスーツを見せつけるように、胸を張りました。そうです。始めにそのウサギさんの毛色だと思った「黒」色は、実は、彼が身に付けたスーツの色だったのです。  それはともかく、私は彼にこう反論しました。  「私は、あなたみたいにスーツを着て働かないわ」  「ああそうか、君は女の子だもんね。いいなぁ、女性はある程度自由に服が選べて・・・」  「いや、そうじゃなくて・・・私は、作家になりたいの。あなたみたいなサラリーマンじゃなくて、作家として、生きていきたいの」  「作家ぁ?」     
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