良き終わりを。

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   「もし・・・・・・」  霊園の出口で声をかけてきたのは佐藤氏の奥さんだった。奥さんとはお葬式のときに面識を得ていた。佐藤氏の最後を話したのだ。  「来ていらっしゃいましたか。本当に主人がお世話になりまして・・・・・・・」と挨拶が続く。  「ところで今日たまたま主人の書斎からこんなものが見つかりまして・・・」  茶封筒を受け取り中を見せてもらうと。用紙が2枚出てきた。    1枚目には望む死の理由が書かれていた。    「飛行機でハイジャック犯を倒し傷つきながらも英雄的な最期を終えると」  2枚目は領収書で「領収済み」と書かれている。  「こんなもんが出てきて・・・・本当に子供みたいでしょう・・・・あの人は映画がとても好きだったの。最初に始めてあの人とデートをしたとき、映画館で見たのが飛行機のハイジャック犯を倒すって映画だったの。主人はお気に入りみたいだったけど、私はムードも何も無くて怒ってたの・・・いい思い出だわ・・・・」  「・・・・あの人はちゃんと満足して逝けたんでしょうか・・・」  私は答えたのだ。    「ご主人は勇気を持って犯人に立ち向かい、そして見事に全員の命を守られました。まさに英雄と呼べる最後でした。きっとあの世でも満足なされているでしょう」  「そうですか・・・・それならいいんですが・・・・・でも私は英雄になんてなって欲しくはなかった・・・・ただお互いに歳を取って畳の上で最期を迎えて欲しかったんです・・・・・」  沈黙が包み込む・・。  「それでは主人に会ってきます。本当にお世話になりました。どうかお元気で」  挨拶を終えると奥へと消えていった。  佐藤氏は英雄的な死を迎えたのか、あるいは逃れられない死をを迎えたのかどっちなのか。あるいは両方絡み合いメビウスの輪のごとく。大局で見れば互いに意味を持ったり持たなかったり。  あの封筒の下ののほうには「良き終わりを」と書かれていた。本当に人生の終わりを決めることができるのだろうか。領収済みとは何が領収されたのか。 「・・・・・・・・・・・・・・・・わからん・・」と頭を掻いてみる。  私は再び歩き始めた。  とりあず帰りに映画をレンタルしようと心に決めたのだ。
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