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国道○号線へと入り、件の事故の多い場所へと差し掛かるとハンドルが重くなったように感じた。車が右へ、中央分離帯へと寄っていく、坂口は慌ててハンドルを左に切った。
「何か右にズレるなぁ……故障かな? 次の休みに車屋行くか」
暫く走っているとまた車が右へと寄っていく、慌ててハンドルを切る手に何かが触れた。
「何だ? 」
視線を落とした坂口の口から悲鳴が出た。
「ぶぅわぁあぁあぁぁ~~ 」
左から伸びた手がハンドルを握っていた。坂口が握るハンドルの下辺りを青白い手が一本見えた。
「だっだだっ、誰が…… 」
助手席を見るが誰も居ない、当然だ。坂口一人しか乗っていないのだ。だがハンドルを握る青白い手は確かに見える。助手席から伸びているように肘から先の腕が確かにあった。
青白い手がグイッとハンドルを引っ張る。左から引っ張られてハンドルは右に切れる。
「あぶっ、危ない!! 」
車が右に寄って中央分離帯にぶつかりそうになって坂口は慌ててブレーキを踏んだ。
ギキキィーーッ、アスファルトがタイヤを削る音を立てて車が止まった。
「あぁ……ああぁあぁぁ………… 」
坂口の口から言葉にならない悲鳴が漏れる。事故りそうになった恐怖からではない。
助手席に女が座っていた。赤黒い服の所々が白い、いや違う、白い服が血に染まって赤黒く見えたのだ。
『もう少しだったのに………… 』
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