トイレ

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 地方都市だが町の中心部に立つ立派なマンションだ。駅の近くという好立地に築年数は5年経っていない、5階建ての3階部分が件の部屋だ。それが相場の半額以下で借りられるという、もちろん曰くはある。事故物件だ。風呂場でホステスの女が自殺したらしい。  前のマンションはあと1ヶ月住むことが出来るが林田は直ぐに引っ越した。築25年経つ古い1Kのマンションと違って新しい部屋は2Kで風呂場とトイレも別々だ。それでいて前のマンションより家賃が5000円も安かった。  怪奇現象や幽霊など一切信じていない林田は立派なマンションが格安で借りられたと大喜びだ。女が自殺したという風呂場もバスタブはもちろん床も壁も天井も全て張り替えリホームされているので林田は気にもせずに使っていた。  住み始めて1ヶ月ほどが経った。  初めは警戒していた林田もすっかり落ち着いて生活している。幽霊や怪異に警戒していたのでは無い、風呂場の匂いや排水管を気にしていたのだ。だが事故物件でよく聞く嫌な匂いや水回りなどがおかしくなるなどは何も無かった。 「二部屋あるとやっぱ違うなぁ、圧迫感がないもんな」  一部屋を普段生活する自分の部屋として使い、残りの部屋を服や趣味の釣り道具などをおく物置として使って林田は大いに満足していた。 「やっぱトイレと風呂が別っていうのもいいよなぁ……だけどなぁ」     
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