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猫ではなかった。赤子だ。真っ赤に染まった赤子が便器の中から這い出してくる。
『ほぎゃ……ほぉぎゃぁ………… 』
便器から出てきた赤子がボタッとトイレの床に落ちた。
『ほぎゃぁ、おぎゃぁぁ、ほぎゃぎゃぁぁ~~ 』
赤子がくるっと林田を見た。生まれたばかりなのか目も開いていない、それなのに視線を感じる。
「ひぅぅ……しぅぅぅ…… 」
腰が抜けたのか、恐怖で硬直したのか、座ったまま動けない林田の前で赤子が泣きながらトイレから出てこようとする。
『おぎゃぁ、ほぎゃぁぁ、おぎゃぎゃぁぁ~~ 』
目の開いていない顔に大きな傷が見える。顔だけではない、頭や手足、体中に刃物で切られたらしき傷があった。全身切り刻まれて血塗れだ。
トイレから這い出てきた赤子が座ったまま動けない林田の太股に手を着いた。
『ほぎゃぁあ、おぎゃぎゃぁぁあぁ~~ 』
血塗れの赤子が抱き付くように膝の上に上ってくる。
「ひぃぃ……やっ、止め…………ひぃぃ………… 」
悲鳴を上げながら林田は気を失った。
翌日、林田は管理会社に赤子のことを訴えた。
普段なら幽霊など聞き流す所だが3ヶ月ほど前に女が自殺したばかりの部屋だ。管理会社も思うところがあったのかトイレや配管を調べてくれた。
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