山の祭り

2/16
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 それにもう1つ楽しみがあった。祭りがあるのだ。実家のある村では御盆の祭りとは別に8月の終りに祭りをしていた。浅井は何の祭りか訊いたことがある。近くの山の神様の祭りだと祖父は笑顔でこたえてくれた。  帰省している5日間、今年は海に2回連れて行って貰って大いに遊んだ。  4日目、楽しみにしていた祭りが始まる。山の中腹に建つ神社で行う小さな祭りだが村の人が屋台などを出してくれる。屋台の数は8つ程度と少ないが村から資金が出ているので全て無料だ。たこ焼きや回転焼き、かき氷など食べ放題である。好きなものを食べながら境内に設置されたスクリーンにプロジェクターで映画を映して村の子供たちと一緒に見るのだ。村人とその親戚くらいしか参加しない小さな祭りだが浅井にとっては忘れることのない夢のような一時なのである。  夕方、と言ってもまだまだ明るい午後5時過ぎだ。浴衣に着替えると浅井は一つ上の従姉妹とその友達2人、合わせて4人で祭りへ行った。子供たちだけでも危なくはない、周りはみんな顔見知りだ。1人ならともかく4人一緒なら怖くもないし所々で大人たちが缶ビールや缶酎ハイ片手に見守るように立っていてくれる。顔見知りの村人たちが集まるのだ。親戚でも無い余所者が居れば直ぐに知れ渡り警戒されるので普段より安全なくらいである。     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!