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「あれ?意外にまともなあだ名を付けるんだね。もっと酷い名前をつけられるのかと思って身構えてたよ」
「なんだ、もっと酷い呼び名をつけて欲しかったのか。そうなら、最初からそう言えば良いのに・・・なら、お前の名前は・・・」
プニ太郎は不満そうな顔をすると、また深く考えるような仕草を見せたあとに、閃いたように目を輝かせる。
「いや!このままでいいから!・・・それにしても、夏帆を"かほ"と読むなんてなんだか安直ね」
「別に良いだろう、お前は"かほ"って感じの顔をしてるんだよ・・・それより、目の前でクラゲが喋っているんだぞ、少しは驚かないのか?」
確かに普通はもっと慌てふためいて驚くものなのかもしれない。あまり感情を人に見せる事が少なくなった私は少し冷めた目で世界を見ていたのかもしれない。
「これでも少しは驚いたつもりなんだけど、もっと感情的に驚いた方が良かったかしら?」
「・・・試しにやってみてくれ」
「わあああああ!クラゲが喋ってるうううう!しかも、プニプニだあああああああ!」
私は息を大きく吸うと、これ以上無い位の感情を込めて叫んだ。
「・・・少し大げさに騒ぎ過ぎじゃないか?誰もいないけど、周りの目が気になるというか」
私の大声に反して、プニ太郎は明らかに冷めたような、何か酷いものでも見たような視線で私を見る。
「そんな冷静な視線でこっちを見るのは止めてよ、本物のスライムをこの目で見れて嬉しかったのよ」
「あっ!お前また私のことをスライムとか言ったな。もう知らん!私は海に帰る!」
私の言葉にピクリと反応すると、体を翻し海の方へと向かおうとしている。どうやら、彼にスライムやクラゲという言葉は禁句のようだ。
「えっ!もう帰っちゃうの!?もう少しここに居たら良いのに・・・っていうか、普通のスライムなのにメタルスライム並の逃げ足の速さだね」
プニ太郎は、サササッと音を立てるように海の方に去っていく。その速さはまるでゴキブリのような印象で、ファンタジーゲームに登場する経験値稼ぎ用のモンスターのようだった。
「・・・そういえば、まだ謝礼を渡してなかったな。少女よ、私を助けてくれたお礼に何か1つ望みを叶えてやろう」
もう少しで体が海に浸かるという所で、突然立ち止まると、後ろを振り向かないままにプニ太郎は私に問いかける。夕日に照らされ、深い蒼色の影になっているその姿は、どこか神秘的で威厳が垣間見えた。
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