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「なんでも願いを叶えてくれるの?」
私はプニ太郎の発言に戸惑いながらも、彼の言うことが嘘では無いような気がして、つい真面目に考えてしまっていた。
「ああ、何でも構わない」
相変わらず後ろは振り向かず、地平線に沈みかけた太陽から目を反らさないまま私に返事をする。
「んー、じゃあ・・・私の友達になってほしい!ずっと一緒にいられる大切な友達に!!」
「・・・!」
私の口から咄嗟に出た言葉は、たぶん私が本当に望んでいることで、丁度一年前に打ち捨てられた願い。
「・・・わかった、お前の願い叶えてやろう。明日またここに来るが良い」
プニ太郎は一瞬ピクリと体を動かして、こちらを振り向きそうになっていたけれど、結局顔を見せることなくそのまま海に消えていく。
「初対面の、しかも、人間でもない生き物に何言ってんだろう私・・・でも」
でも、クラゲのようなスライムのような姿をした不思議な友達との交流は素直に楽しかった。
1年前のあの日、私は2度と人を信じないと誓った。それなのに、今の私はアビスと名乗る生命体の言葉を信じようとしている。
本当は誰かを信じていたかったのかもしれない、そして、そんな純粋な気持ちのまま一緒に過ごしていたいと心の奥底の気持ちが私を突き動かしたのだろうか。
いくら考えようとも答えは出なかったけど、沈む夕日を眺める私の心は少し穏やかで、久しぶりに暖かさを感じた。
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