第1章 海からの贈り物

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セントラルタワー。それが2体の地球外生命体が戦った跡地に出現した、空高く聳える大型のビルと円柱状の塔を合わせたような歪な構造物の通称。 突如として東京の町に現れたそれは、人々を観測者と呼ばれる存在へと進化させた。観測者は個体毎に異なった特殊な能力を持ち、ワープ波と呼ばれるものを感知することができるという。 「これがセントラルタワー・・・予想以上に不気味ね。こんなものを巡って争うなんて馬鹿みたい」 私は初めて見るセントラルタワーの異様さに目を奪われていた。そして、その構造物の前では、その中枢に辿り着こうとする多くの人々がお互いを押し倒し合い、その力を人に向けて使っている。 「こんなの間違ってる・・・!この力は人間同士が争うために与えられたものじゃないのにっ・・・!」 隣に立つ蒼井空と名乗る少年は、目の前の光景に憤りの表情を見せ、歯を強く食い縛っている。 「夏帆さん!あぶないっ!」 その声に周囲を確認すると、能力者が作り出した光弾のようなエネルギーの塊が目の前に迫っていた。 私は、突然のことに対処できずに立ち尽くすしかなかった。 「大丈夫ですか・・・夏帆さん・・・?」 しかし、その光弾が私に到達するより前に蒼井空が自分の体と共に私を突き飛ばす。光弾は私達が先程までいた場所を大きく削り取っていた。
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