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「プニ太郎!プニ太郎!」
しばらく森を走り抜け、周囲に人の気配が感じられない場所に辿り着くとようやくその足を止めた。
何度呼び掛けても、体を揺すってもプニ太郎は全く目を開ける気配がない。
「私のせいだ・・・異種の事情も考えずに軽率だった・・・」
私と里見の様に人同士ですら分かり合えないのに、未知の生命体同士を引き合わせるなんてあまりに無茶だった。そんな私の軽はずみの行動が今の事態を招いた。私は地面の土を握り締めると、地面に水滴がポタポタと落ちていることに気付く。
(涙・・・?私が・・・泣いてる?なんで・・・)
涙を流したのなんていつぶりだろう。きっと、この地で崖から落とされた日が最後。あの日から私は世界がどうしようもなく醜い物に見えた。そんな世界で感情を表に出すことはなくなり、徐々に感動も人の気持ちも感じることができなくなった。
(そっか・・・私プニ太郎のことが好きだったんだ)
突然現れた海からの贈り物は遠慮なく私の心に踏み込んで来て、徐々にゆっくりと優しく私を外の世界へと戻そうとしている。
「嫌だよ・・・せっかく信じられる大切な友達になったのに・・・ずっと一緒だって約束したじゃない・・・」
私はプニ太郎を強く抱き締める。涙が止まらずにプニ太郎の体に落ちて吸収されていく。
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